デザイナー Christwart Conrad
プレイ人数 2-5
プレイ時間 60分
対象年齢 12+
どんなゲーム?
デザイナーはカルカソンヌの派生シリーズをいくつか出しているChristwart Conrad。恐らく一番有名な作品は1998年リリース、このフランチャイズのリメイク元の「胡椒袋」。「豪商」というタイトルでも国内流通している。
胡椒袋というのはそのまま胡椒の入った袋の事ではなくて、当時重量換算で金以上に高価だった胡椒をため込むほどの金持ちを揶揄して使われた言葉、なのでどちらかというと拝金主義者に対する皮肉のニュアンスが強いので豪商というよりは成金なんかのほうが近いように思う。
システム的には王道の部類ながら名作として入手難ながら高いゲーム性で非常に人気がある。人によっては欠点にもなるいささか渋すぎるきらいのあるアートワーク、計算が複雑、三桁単位で下一桁までの暗算をゲーム中いろんな場面でしなくてはならなかったの物をアートワーク刷新、計算をシンプルに、複雑にならない程度にルール追加を行ったリメイクがこの「フランチャイズ」になる。
その渋みや計算の多さにも根強いファンがいる胡椒袋だけにリメイクの遊び心地はどんなものなのかをレビューしたいと思う。
変更点は?
恐らくゲームのプレイ感に一番大きく影響を与えた点として、都市単位の他に州単位での大規模エリアマジョリティの追加がある。
この変更により各地の都市一つ一つでマジョリティの取り合いに勝ってもその後大きな視点で見るとトータルで得にならない場面が出てくる。
都市単位でマジョリティを取ると、得点のかわりに自分のコマは1コマだけ残してすべて手元に戻すよう変更が入った。フレイバーを考えるとすこし腑に落ちないがこの変更により資金を使って支店を増やしても、アクセルを踏みすぎると州単位ではマジョリティがとりにくくりなっていて争いに深みが生まれている。
ミクロ視点とマクロ視点同時並行で考える必要が出てくるので、目論見がはまって得点の最大化が達成でき、相手を出し抜いた時の気持ちの良さは他のゲームではちょっと味わえない。
続いてネットワークに関して。隣の街や都市に次々と浸食していく典型的なネットワークとエリアインフルーエンスの要素にも手が入った。
胡椒袋では取るルートにより接続にかかるコストがまちまちで端数のある二桁、効率が良いのか悪いのか細かい計算をしないと見通せない部分があったがここがシンプルに接続先の年の大きさにあわせて5種類程度の一桁のコストに、また都市内での占有率の増加に1金がかかるようになり、増加させない代わりに収入を得るという胡椒袋でのリソースを得る主要なアクションアクションがなくなっている。
代わりに都市単位で出店数の少ないはいわゆるブルーオーシャン状態の店舗を持つことにより手番最初の収入フェーズで収入が増加するようルール追加がある。
他に広告文句的な大きな変更点と言える初期の都市タイル。胡椒袋では都市の初期開発はゲーム開始時に秘密裏に配布された都市をタイルを使ってしか行えず、ここが隠蔽要素かつランダム要素になっていた。フランチャイズではゲーム開始時にすべてが公開されるようになり、「完全情報(公開)ゲーム」を謳えるようになった。この点はプレイヤーにとって大きな違いかと思ったがプレイしてみるとさして違いはない印象。
ルールブック上の記載の変更だけとも言えるので、気になる人はハウスルールやバリエーションとして初期に配布する形にしてもいいのかもしれない。
注:都市の規模でタイルの大きさに変更がでているので第二版ルール(バリエーションかもしれない)の得点でグループ化してランダム配布するのと似たルールになる
細かいながら気にする人が多いんじゃないと思うのはお札。
これがシンプルなカードに変わっている。
プレイアビリティは間違いなく上がったように思うがビラビラ感やら実際に商売でやりとりしてる気分、渋かっこいいアートワークがなくなったのは個人的に少し残念。5人プレイだと$2紙幣の枚数に若干の不安があったことも記載しておく。
変更点を踏まえた評価は?
マジョリティと言えばシャハトを思い浮かべる方も多いと思うが、あの霧の中を手探りで進みながらゲームの進展に合わせて各員の目論見がみえてきて視界が開けてくるような不安と苦しさ、見晴らせた瞬間のカタルシスとはかなり味が違う。
開幕からかなり見通しもよく、計画性と妨害回避を中心に据えるゲーム性は思考量の多いゲームが好きな人には最高に楽しいんじゃないかと思う。
出店計画に集中できるよう胡椒袋であった足し算をしながら全体を考えなくてはならない点の改変は大きくゲーム性に影響が出ている。
そして変更点でも述べたルールの追加である州単位でのマジョリティの追加が最高にスパイシー。細かい単位で点数を取るのか、小競り合いには参加せず大きなくくりで得点していくかの取捨選択、どっちも引かず一地方に集中してその両方を得るのか、選択肢が増えた上に計算がシンプルになった事でその出店計画に集中できる作りになっているのも遊び口の違いにつながっている。
総じて遊びやすくなりつつも悩ましさは深いまま、直接攻撃はしないものの他プレイヤーとのインタラクションも当然のようにあり大変アツく楽しいゲームだ。
胡椒袋と比べてどうなの?
恐らく買い控えてる、悩んでる人の最大の関心事項なんじゃないかと思うのでこの点についても触れてみたい。
フランチャイズに焦点をあてて話をする。
ルールの大筋は同じものの、細かい変更を積み重ねた結果かなり違う遊び口のゲームになっている。システム的に必要のない個人ボードとそこに印刷されたサマリーがあったりと、フレイバーやアートワーク、プレイアビリティを大事にしている全体的な味付けは完全に2020年頃のゲームといった感じ。逆に言うとシステム以外の印象は「よくある最近のゲーム」の印象なのは否めない。それでもプレイしやすくなってゲームに集中できるのは間違いのない美点。
好みの部分を排すればどちらもとても悩ましくて奥深く、リプレイ性があり同じ人と遊んでも展開が豊富。ボードゲーマー大好きジレンマも都市と州ののマジョリティの両立の難しさで担保している。
ネットワーク構築からエリアインフルーエンス、最後はマジョリティ争い、といった点は同じなのだが、遊んだ印象は別のゲームと言っても差し支えないくらい違う。なので胡椒袋のほうが面白いならフランチャイズは・・・とかその逆という心配はせず、入手しやすいほうを買って、もう一方の入手機会があればそっちも買ってもアートワーク違いを買ってしまったような後悔はないはず。
結論:安心してどっちも買おう!
フランチャイズ / Franchise