ハンザの女王 / Queen of Hanza

レビューKei

ハンザの女王 カバー

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Rating:
5
On 2019年6月3日
Last modified:2020年5月30日

Summary:

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デザイナー 畠山大 / Yutaka Hatakeyama
アートワーク クレメンス・フランツ
プレイ人数 2-4
プレイ時間 45分
対象年齢 8+

同人サークルゆるあ~とさんのハンザの女王がアートワークにアグリコラ、パッチワーク等のクレメンス・フランツを迎えてリファイン。
日本人デザイナーの作品に世界トップクラスのイラストレーターがアートワークを担当するだけでも話題性十分。 しかも日本人ゲーマーはみんなここ育てられたと言っても過言ではないホビージャパンのプロデュース!
色々な意味で国産ゲームが1歩先のステージに進む可能性を秘めた今作をレビュー。

 

どんなゲームなの?

13世紀~17世紀にヨーロッパを中心に世界中の貿易の中心となったハンザ同盟と呼ばれた商人ギルドを舞台に商人として経営参画し大成する事を目指す。
ハンザ同盟をざっくり説明すると国家に属せず自由経済を武器に軍や国と対等な立場で世界経済を席捲した商人ギルド。今でいうとAmazonやGoogleが近いのかもしれない。
その盟主、 ハンザの女王と称される海港都市リューベックを舞台に同盟に対する政治活動と実際の取引を行い商いをしていく。パッケージの女性が女王なわけではなかったりする。

ハンザ同盟内の主要な4都市での覇権を争う

実際のプレイは?

この壮大なテーマを徹底的に抽象化、なんと手番では手札2枚から1枚を裏か表で出すだけのシンプルなルールに落とし込んだ。
表向きでプレイの場合、カードの背景色で示されている都市と商取引を行い、裏向きでプレイした場合にはハンザ同盟内での政治的活動を行う。
商売を行えばその都市に対する直接的な経済的影響量を得られ、裏向きでプレイすれば同盟からの政治工作により都市に対する経済的価値を操作する事ができる。
また裏向きの場合好きな都市の港から、都市への影響力を高めるために表向きにプレイするとその都市の港に係留している船や人物、他の都市の荷物などを獲得できる。 影響力を高めると欲しいカードは手に入れられなかったり、他プレイヤーの必要カードをブロックできなかったりと大変悩ましい。

手番では手元に裏か表で色(都市)別にカードを出すだけ

得点システム

各都市ごとに影響力の最も高いプレイヤーに経済的価値に紐づいた収入が与えられる。
影響力が2番手以降のプレイヤーにはその都市算出の貨物と経済価値を掛け算した収入が入るのだが、これが1位の固定点を超えることがあり、影響力と貨物の取得、経済価値の操作の3要素入り乱れての非常に悩ましい得点システムになっている。
さらに同盟内に影響力を持つ人物カードもあり、プレイすることにより交友を深められる。こちらは顔を広く付き合いを広げる、特定の人物と深くかかわる、と2種類の得点方法がある。

筆者のプレイでは人物との交友メインでも経済活動メインでも、ゲームごとに違う筋で勝つプレイヤーがでてきており、特定の得点手段が飛びぬけて強いこともなく勝ち筋が豊富になるよう相当なバランス調整がなされている様子。
丁寧なバランス調整の結果、あちこちを立てながら他プレイヤーへのインタラクションも行わねばならない考えどころの多いシステムの構築に成功している。

プレイアビリティ―の高い盤面設計

メインボードにはカードを置くための枠が印刷してあり、取得できるカードはわかりやすく異なるデザインになっている。 またやや複雑な経済的価値の変動は得点ボードにアイコン化されたサマリーが記載されておりプレイを中断する事なく迷わず確認できるよう配慮されている。
ともすれば重厚になりがちな経済テーマのゲームをゲームデザイン、盤面デザインの双方からゲーム性を損なわず極力軽くストレスなく遊べるよう設計されている。

たいへんわかりやすい盤面設計。 システムだけでなくプレイヤーに向きあってるのがわかり好感がもてる

総評

ゲームとしての考えどころや悩ましさ。いわゆるゲーム性にあたる部分に妥協せず、それでも簡単なルール。さらにはプレイしやすい盤面設計、有名アーティストによる親しみやすいアートワーク。
これだけの要素を全て詰め込んだうえ、プレイ時間は4人で1時間かからない遊びやすい長さに調整されている。
重いゲームの入門としても、ゲーマーズゲーム入門としても使いやすく、価格も大箱に類するゲーマーズゲームとしては3000円と購入しやすい。

さらに個人的に素晴らしいと思ったのは箱のサイズと重量。
大箱としては小さめ、中箱としてはやや大き目ながら薄く物理的に軽い。ゲーム会に持ち出しやすいようにと考慮してのことだと思われる。

どこをとっても妥協が見られず、相当な気合を入れてのリリースなのではと思う。
ゲーマーとしても楽しく向き合えるし、ボードゲームが好きな人間としてリーディングカンパニーの一つ、ホビージャパン渾身の一撃は是非体験すべきと思う。

ゲームマーケット先行販売品は印刷に若干の不備があるがこちらの登録フォームから登録するだけで代替品を送付してもらえる。
事前に不備が発覚しており、発送コストの負担があるにもかかわらず先行販売を強行してユーザーの手に一日もはやく届けたあたりにも気合が見て取れる。

国産ボードゲームシーンに風を起こそうというこの気合、ボードゲーマーとして絶対受け止めるべき!という事で文句なくおすすめ!

Kei

できるだけ感覚そのままより言語化、体系化して伝えるレビューを心がけてます。

ハンザの女王 / Queen of Hanza

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