はじめましての方ははじめまして、Pomと申します。
普段はボードゲームの動画を作ってる者ですが、ゆえあって寄稿させていただく運びとなりました。よろしくお願い致します。
自由度の高いお絵描きゲーム
こちらで紹介するタイトルは『ピクトマニア』。「お題に合わせた絵を描き、お題を当て合う」という、極めてシンプルな構造を持つお絵描きゲームだ。デザイナーは傑作推理ゲーム『コードネーム』を制作したヴラーダ・フヴァチルで、本作にもちょっとした推理要素が含まれている。
デザイン:Vlaada Chvatil
プレイ時間:約30~45分
プレイ人数:3~6人
対象年齢:8歳以上
お絵描きゲームのお約束といえば、絵の上手い下手に関する問答だろう。ゲーム会で集まった人間に「さぁ絵を描くぞ」と言えば、必ず「えーおれ下手だよ?」との声が上がる。上がった。100回くらい。
だがご安心を。こうした作品の見どころは、プレイヤーの絵の巧拙を埋めるメカニクスにこそあるのだ。さらに本作は、自由に線を引くことを阻害する要素が極めて少ない。もちろん文字で説明するのはアウトだが、基本的に自由にお絵描きを楽しませてくれる。
『ピクトマニア』は、限られた情報から回答を導く“推理”と、プレイヤーを焦らせる“リアルタイム性”の2要素によって、ゲームとしての受け幅と自由度を維持している。お絵描き系ゲーム好きの筆者としても、かなりおすすめ度の高い名作だ。
上手い絵は上手いやつに任せとけ
ゲームが始まる前、プレイヤーの前には3枚のお題カードが提示される(全プレイヤーが共通のお題カードを用いる)。それぞれのカードには、カードごとに共通したテーマを持つ7つのお題が書かれており、プレイヤーはその中からランダムに指定されたお題を描くわけだ。
各プレイヤーにはお題カードの表示(写真参照)に対応した1~7の数字カードが配られており、これを使って回答を行うことになる。
ここでポイントになるのは、お題の指定と回答の手段。3枚のお題カードにはA~Cのアルファベットが振られており、1~7の数字とアルファベットの組み合わせでお題が指定される。加えて、A~Cの指定に用いるカードは各アルファベットごとに最大2枚ずつしかない。
つまり、Aのお題カードを元に絵を描いているプレイヤーを2人見つけたら「もうAのお題は見なくていい」となる。また、既に回答済みの数字も選択肢から除外される。……とまぁそんな具合で、上手な絵の回答を先に済ませてしまえば、どんどん選択肢が狭まっていくワケだ。
たとえミミズがのたうつような線の盆踊りが紙の上に顕現していたとしても、2択まで絞り込めば当ててくれるやもしれん! むしろ、一見して「こりゃ後回しにしよう」と思ってもらえる(いわゆる下手くそな)絵のほうが正解を貰ったりするのが、本作における“推理”の面白さと言える。
なお、ゲームは全4ラウンド行うのだが、ラウンドが回るごとにお題の難度が上がっていく。後半ほどより発想に重きをおいた問題が出題されるので、大喜利的な発想力をもって下剋上を見せつけるチャンスだ
上手く描けるモンなら描いてみろ
これら「描く」→「回答する」という挙動は、まるごとリアルタイムで行われる。各プレイヤーはお題を認識したら「せーの」で絵を描き始め、描き終わったら各自好きなタイミングでペンを置き、描いている途中だろうがなんだろうが関係なく回答を行えるのである。
正解時に得られる点数は回答した順番によって大きく変化する。絵を当ててもらったプレイヤーは自分が持っている得点トークン(写真参照)を正解者に与えるのだが、これは(最大人数時で)3、2、2、1、1といった構成になっているので、早く正解するほどオイシイ。ぶっちゃけ細かく描き込んでる時間は全然ないので、そもそも“上手い絵”を描いてる余裕はない。
先程解説した通り、たとえ絵がキュビズムの粋に到達していたとしても、ある程度の情報さえ詰まっていれば推理はできる。加えて、上手かろうが下手だろうが得点は“相手の絵を当てられたか否か”によって決まるので、本当にどうしようもなかったら回答に注力するのもアリ。
ただし、不正解で渡せなかった(手元に残ってしまった)トークンはまるごと失点になる。全員が不正解してしまったら合計3+2+2+1+1で9失点! このゲームは平然と得点がマイナスに突っ込むので、最低限の伝える努力は必要だ。ああ、遠くから「こんなモン分かるか!」「石器時代の壁画のほうが上手い」「印象派の犬め!」という叫び声が聞こえるが気にしてはならない。息子よ、あれはただの木々がこすれる音だ。耳を伏せていなさい(-9点)。
総評
実際に遊んでみると分かるが、本作は絵の巧拙よりも発想を競うゲームだ。例えばレモンを表現するにしても、単にレモンを描くのが正解とは限らない。すっぱそうな顔の人が何かを食ってる絵でもよいし、なんだったら唐揚げに何かをかけている様子を描いてもよい。その表現方法は無限に存在する。
また、これは個人的な楽しみ方なのだが……。こいつを購入して色々な場所で遊ぶと、箱の中にトンチキなイラストが山程累積していく。こいつを後から眺めて「これなんだっけ」と思い返してみるのもなかなかおもしろい。
2019年に新版がリリースされ、入手性が高まった本作。お絵描き系のゲームに興味がある人は、ぜひ選択肢に加えてほしい逸品だ。
ピクトマニア