デザイナー:David Chircop
プレイ人数:2~5人
プレイ時間:20分 × 人数
対象年齢: 10歳~
ラテン語で岩の血管の意。
植物が水分の取り合いで自滅しないよう乾燥期に発する発芽抑制物質が岩にしみわたった様子からこの名称に。
この抑制物質が雨で流れ落ちることで雨上がり独特の香りが発生し、転じて雨上がりの匂いの事をペトリコールと言う。
どんなゲーム?
美しいテーマとそれにふさわしい美しいアートワークとコンポーネント、しかし内容は一転してアブストラクト感の強い壮絶な生存競争と言う、美しくも過酷な植物の生き残りレースを再現したゲームになっている。
Kickstarterでの資金集めを経て、5人プレイ可能になるエクスパンションをセットにして日本語版がホビージャパンより発売されている。
今回はこの過酷な生存レースのレビューする。
基本システム
4種類のカードから1種をプレイしてカード記載のアクションを実行、アクションから自色の水滴コマを雨雲や植物の生い茂る地面に配置、さらにアクションした内容に応じてラウンド終了時に発生する天候に投票する。
手番で行うのはカードを1枚プレイしてアクション実行、付随する投票権のある天候から選択して投票するだけ。
非常に単純で雨粒や投票結果は全プレイヤーに丸見え。手札の内容こそ伏せているものの盤面ではほぼ完全に情報が開示されている非常にシビアな読みあいが発生する。
アクションでは雲を発生させたり成長させたり、はたまた雨を降らせたりスコールを発生させたりして雨粒を地面に落としていく。
その雨粒を数や落とすタイミング様々な条件で得点に変えてくれる植物に与えていき得点を獲得していく。
またアクションをとった際、アクションにより2種類から選択できる天候に投票を行う。
この投票結果により雨雲や地面に降り注いだ雨粒に様々な影響を与えられる。
自分に都合の良い天候に投票するのはもちろん、その天候に決定させた最大功労者には決定させた回数によってボーナス得点があるのでこちらもまた植物の育成とあわせて重要な得点源になる。
また、この際投票を行わず中央のダイスの目を一つ下げて1勝利点を得る事もできる。この1勝利点自体は馬鹿にできないとは言えさほど大きくない得点源なのだが、3つのダイスすべてが0までカウントダウンされると植物の収穫がはじまり、これにより得点の決算が起こる。
自分だけに都合のいいタイミングで決算を起こすため、投票回数との取捨選択が非常に悩ましい。
また、もちろんダイスの目を下げたことも完全に公開される情報であるため行動の予測もされやすく駆け引きをさらに熾烈にする要素になっている。
プレイ感は?
アブストラクト特有の先読みと自分の行動の透け感の苦しさ、取捨選択のジレンマ、決済タイミングの不透明さからくる予測の難しさがからみあい非常に苦しい
公開情報から打ち手が決まるので他人のプレイへの口頭による誘導もとにかく熾烈になりがち。
多人数アブストラクトが好きで口八丁でごちゃごちゃと話会える仲間、となかなかに厳しい条件をクリアできれば最高に楽しい時間になるが、どちらかが欠けるとひたすらシビアで読みにくい展開の続く地味なゲームになってしまう。
そういったメンバーが集まるなら美麗なアートワークとあちこち悩ましくランダムセットアップによるリプレイ性、ユニークなゲームシステムでとても楽しい時間が過ごせると思う。
ただし細かい処理が非常に多く、複雑な読みあいも相まって慣れるまではルールブックと行ったり来たりにもなるので、その辺も我慢できる方なら
できるだけ感覚そのままより言語化、体系化して伝えるレビューを心がけてます。
ペトリコール / Petrichor