町作りが楽しめるボードゲームは数限りなくあるわけだけど、今回はその中でも、著者がいま最も推しているゲーム「リトルタウンビルダーズ」を紹介する。ちなみに今回この「今日も駄目ダイス」で初めて紹介を書かせていただく黒菱シンカと申します。
こちらのゲーム、ルールがめちゃくちゃわかりやすくて、プレイ時間もさほどかからないにもかかわらず、非常に色濃い戦略性が味わえるようデザインされていて、ほんとうに昨今の一推し作品。
デザイナー: shun&AYA(studio GG)
イラスト:たかみまこと
プレイ人数: 2~4人
プレイ時間:30-60分
対象年齢: 8歳~
同人版から製品版へ
「リトルタウンビルダーズ」の初出はゲームマーケット2017秋でstudio GGより頒布された同人ゲーム。その後、海外にてiello社から製品化され、今年2020年の1月にはアークライト社より国内でも発売された。昨今の発売数からすると三ヶ月前なんてもう「ちょっと前」みたいな印象だったりもするけれど、まだまだ出たばかりの新作と言える。
遊び心地としては中量級といったところ。ワーカープレイスメント的な戦略性で楽しませつつ、ほんとうに手軽に遊べる仕上がりになっているので、初見であってもそれほど時間はかからないのではないかと思う。
ワーカープレイスメントで町作り
リトルタウンビルダーズはいわゆるワーカープレイスメントゲームだ。コマのことを「ワーカー」と呼んで、このワーカーコマを、ボード上の好きなところに置きましょう!同じところには置けないので早い者勝ちだよ!置かれた場所ごとの効果が発動するよ!といったタイプのボードゲームである。
配置するためのマスの意味合いを、ゲームの舞台背景に合わせて変えることによって、ワーカーという人の形をしたコマを配置する、という行為の中に「ストーリ-」を見出させやすくなるところが、ワーカープレイスメントのよいところ(の一つ)じゃないか、って思っていたりもする。個人的にはこういったボドゲ的ロールプレイ感がかなり好きだ。
ゲームとしては、四角形の格子状にマスが描かれたタウンボードの上に、ワーカーコマを置く、というアクションが基本になっている。そして、置いたワーカーコマの周辺8マスにある「タイル」の特殊効果を(好きな順番で)使うことができる、というメカニクスが、このゲームの醍醐味になる。資源を得たり、変換したり、勝利点を獲得したりできる。
ワーカーコマをタウンボードに置く代わりに、ワーカーコマを建築現場に派遣して「建築物を建てる」ことも可能だ。派遣したあと、コストとして資源を払うことで、用意された建物タイルを、好きなところに置ける。
建築物タイルにはそれぞれ特殊効果が決められているため、ボード上に建物が増えれば増えるほど、ワーカーコマを置いた時の特殊効果が派手になっていく。後半になるにつれて、ひとつひとつのコマの効果がおおきくなっていく構造になっている。
建物タイルを置いたマスにはワーカーコマを置くことができなくなるため、一手でたくさんの効果を得ようとして変に集中して建物を作りすぎると、結局、誰もワーカーコマを置けなくなってしまう、というバランス調整も、非常によいプレイ感に繋がっているかと思う。
建物と目標カード
自分が建てた建物をほかのプレイヤーに使ってもらうことで、使用料として、1金をもらうこともできる。ので、他のプレイヤーが使いたくなるようなところに建物タイルを置くのも有効なのだけど、手番順を意識しておかないと、美味しいマスをただただプレゼントするだけになってしまうこともある。ので、注意だ(やりがちなので自戒だ)。
プレイの指針となる目標カードも最初に配られる。ここに描かれている条件を達成したときに公開することによって、勝利点を得ることができる。このゲームで勝敗を決める勝利点は、ゲーム中に資源を変換したりして獲得した得点、建てた建物タイルごとが持っている得点、そして、目標カードの得点、を足したものになっている(あと余った3金ごとに1勝利点が貰える)。勝利点に関する隠匿要素は未達成の目標カードくらいしかないので、なかなか見通しよくプレイできる(そのぶんワーカープレイスメント面でのマスの邪魔しあいが過熱するとも言える)。
短時間で濃く遊びたい時に
一手でいくつもの建物の特殊効果を発動させてコンボ的に資源を得るのも楽しいし、ほかのプレイヤーに建物を使ってもらって1金を稼いでいくのも楽しい。製品化されたことによって、建物タイルがさらに増えてリプレイ性もより増したし、エリアマジョリティを競うことのできる巡礼地といった建物まで増えて、異なる戦略性を追加することもできるようになった。
同人版では非常にシンプルだったアートワークも(とはいえアートワークがシンプルであろうと面白いものは面白いと思わされるクオリティだったわけだけれど)、やわらかく素敵な街並みに刷新されて、気軽に遊べるワーカープレイスメントとしては、抜群の出来栄えになったのではないかと思う。ワーカーコマがネコ型になったところも楽しいところだ。
ラウンドの最後にはワーカー分の食料を支払わないとならない、といった楽しい苦しさもきちんと用意されていて、このあたりの苦しさの妙味については好き好きあるのだろうけれど、個人的には非常に好物だ。
まとめ
短時間で、複雑でないルール説明を行ないつつ、きちんとボードを使って、頭をひねりながら戦略的に遊びたい、というような瞬間が、ボードゲーマーなら誰にしもあるのではないかと思う。そんなシチュエーションにぴったりと一品と言える。同人版でさんざん遊び尽くしたのだけど、アークライト版の追加建物を加えてもっと遊びたいし、できることなら海外版も買ってしまおうかなとさえ思わされている(海外版のアートワークも素敵なのだ。建物タイルに建物の名称が書かれていないのが残念なのだけど……)。そんな魅力的な一品でもあります。
リトルタウンビルダーズ