ヒントを言いたい欲、というのが人にはあるんじゃないかなーと思っているところがあります。「ヒントをいいます」というそのものズバリ、お題に対してのヒントを言いましょう、というお子さま向けのゲームもあるくらい、素朴な楽しさがそこにあると思っていたりする。
連想を使って人様の思考を導こうとするのが楽しい。いかに最低限の情報で相手にお題まで辿り着かせるかという脳内シミュレーションが楽しい。そもそも、連想ゲームってさまざまなゲームの中でも特異な楽しさがある。いわゆるワードゲームは、そこにさらに変な「縛り」を入れてきてくれるから、なおさら楽しかったりします。脳みそに変な枷をかけるのって楽しいよね、なんて思う。有名どころだと「ボブジテン」(商業版だと「カタカナーシ」)なんかが好例ではないかと思います。
個人的には「ゴモジン」というゲームがたいへん好きで、このゲーム、前述したようにヒントを言って連想させるタイプの作品ではあるんですけども、このゲームが見せてくる、ヒントを言うための縛り、が、めちゃくちゃ好きだったりします。ボードゲーム全般に、よくそんな行為の中に楽しさがあるって気づいたな……!という驚きを求めているところがありますが、その中でも筆頭だと言えるくらい。それがシンプルなものであればなおさら。
という「ヒントを言いたい欲」に対して、漢字2文字とカタカナ3文字、あわせて5文字だけでヒントを出しましょう~、という縛りをかけてくるワードゲーム「ゴモジン」を、今回はご紹介したいと思いました。この漢字2文字+カタカナ3文字という組み合わせについて試行錯誤を重ねるのが妙に楽しくて好きです。
【タイトル】ゴモジン
【デザイナー】郡山喜彦
【イラスト】TANSAN
【プレイ時間】15分
【プレイ人数】3~6人
【年齢】12歳〜
今回紹介する「ゴモジン」は、もともとゲームマーケット2018春でサークル「一年中未来」より頒布された同人ゲーム「□□○○○」の製品版。非常に人気で即座に売り切れてしまっていて、しばらく入手が困難だった中、改題され、JELLY JELLY GAMESより製品化されました。読みかたがわかりにくかったという話もあり、検索にも向かなかったとは思いますが、□□○○○というタイトルも斬新で好きでした。ちなみに製品版ゴモジンのパッケージには「□□○○○」の文字がひっそり隠されていたりもします。
ゴモジンは親だけがお題を見ずに、親以外のまわりのプレイヤーがお題を見て、それにまつわるヒントを一つ書いて、順番に見せていくタイプのゲーム。
ヒントを書き終わった順に、何番目に見せるかというタイルが獲得できる。
見せる順番も当然ながら重要になってきます。もちろん、親が当てた瞬間にそのラウンドは終わってしまうので、親に対して早く見せられるに越したことはないわけですが、お題が難しいものだったりした場合、ヒント一つで当てられるとは限らないわけで、2番目3番目にヒントを見せる位置づけにいたほうが、意外に有効だったりもします。それまでに見たヒントとの兼ね合いの中で当ててくれたりする(こともある)。
で、ヒントを書くときに、漢字2文字+カタカナ3文字という形式にして書かなくてはならない、という縛りがあるのが、このゲームの特徴。文字数は必ず5文字。
ただ、漢字2文字、カタカナ3文字、別にこれらが「辞書的に存在するきちんとした熟語」になっている必要はなかったりします(とはいえ、熟語になっていればボーナス得点が入る)。擬音みたいなものでもぜんぜんいい。漢字で熟語として存在している言葉を、カタカナ3文字のほうにカタカナで書くのだってアリ。翻訳した言葉もアリになっています。
漢字に関しては「お題に使われている漢字はヒントに使ってはならない」、カタカナの場合も「お題に使われているカタカナの文字列3つをそのまま使ってはならない」といった制限はあるものの、基本的には制限少なめで、だからこそ意外なヒントが出てきて笑ったりします。
漢字2文字とカタカナ3文字というちょっと異質な二つのヒントを同時に思い浮かべようとするのが楽しさのキモなのかなと思ったりはします。漢字はともかくカタカナ3文字だけだと言えることはかなり限られてくるし、なので、漢字2文字で伝えたいことの方向性を伝えつつカタカナでうまくピントを絞る、みたいなことができると気持ち良かったりもします。
あと、この作品、お題カードの出来栄えが非常によい印象があります。まず難しさの調整が非常によい雰囲気。実際のところヒントとなるワードを二つ提示しているし、「辞書的に熟語として成立している言葉じゃなくてもいいよ」ってなっているぶん、お題が簡単なものだと、かなりあっさり答えられたりしちゃうんですよね……。でも、それを許容するくらいの難易度にうまく合わせてくれている気がする。
というのと同時に、お題から想像できる「イメージ」が一律だと、みんな同じようなワードでヒントを出し始めてしまうので、単なる「書くスピード勝負」になってしまったりしまいがちです。という「イメージが一つにならないようにする」ということを、ものすごく突き詰めて、調整してある印象が強いです。そのお題を表すための言葉って一つじゃ足りないよね!って思わされるものが、ものすごくたくさん集めてある。なので、あ、そこをヒントとして持ってくるんだ、というのが、それぞれでうまくバラバラになってくれることが多くて、ほかのプレイヤーたちとのヒントと見比べるのが、すごく楽しい。
ルールだけでいえば、ほかのワードゲームのお題カードなんかを使って、同じ遊びをすることは可能だろうと思うんですが、このお題の選別の秀逸さはきちんとこの「ゴモジン」を使って遊ばないと楽しめないよね、なんて思っていたりもします。
ちなみに、この「ゴモジン」、同人版だったときの「□□○○○」とはルールが少し変わっていて、「□□○○○」のときは、「辞書的にきちんと存在する言葉」をたくさん使っているほうが「親に先に見せることができる」というルールだったんですよね……(その代わりボーナス得点はなかった)。
先に見せられるかどうか、っていうのはこのゲーム的にはかなりおおきな影響がありますし、そこを気にしつつ「辞書的にきちんと存在する言葉」でヒントを成立させようとすると、なかなか難度が上がって面白かったりもするので、上位ルールみたいなものとして、ときどき、この同人版のルールを採用して遊んでたりもします(ちょっとだけ複雑にはなっちゃうのでゲーム慣れしている人ならという感じ)(同人版のルールはいちおうゲームマーケットの該当ページで見ることができます(2020年7月時点))
https://gamemarket.jp/game/90557
遊びやすさ入手しやすさも相まって、ワードゲーム系でボードゲーム初心者におすすめするならこれかなと思っている作品でもあります。誕生日プレゼントとかで配って回りたいくらい。めちゃくちゃおすすめです。
ゴモジン