怪獣レヴィアスvs人類の心理戦。災害怪獣戦略ボードゲーム『レヴィアス』でようやく遊ぶことができたので、今回はこちらを紹介したい。
Kaiju on the Earthと呼ばれるプロジェクトによって作られた作品の1つで、前作『ボルカルス』に続く第2弾となる。今回も当然、巨大怪獣と人類との戦いがテーマ。ボルカルスが溶岩から姿をあらわした怪獣だったのに対し、今作のレヴィアスは、海中からその巨体をあらわした怪獣、となっている。
【タイトル】レヴィアス
【デザイナー】金子裕司(かぼへる)
【ディレクション】渡辺範明(ドロッセルマイヤーズ)
【イラスト】開田裕治・中村豪司
【プレイ時間】30〜60分
【プレイ人数】2~5人
【年齢】10歳〜
災害怪獣 vs 海上自衛隊
沖縄の海中に身をひそめ、津波アクションや捕食アクションによって攻撃をしかけてくるレヴィアス。その脅威に対抗すべく、今度は海上自衛隊が立ち上がる。
今作『レヴィアス』も、前作『ボルカルス』と同じように、プレイヤーの1人が怪獣を担当し、ほかのプレイヤーたちは人類側、海上自衛隊の隊員となって、その怪獣に立ち向かっていく、という作品となっている。一対多のチーム戦だ。
東京を舞台に暴れ回ったボルカルスと違い、レヴィアスは居場所を隠しながら、海中よりひっそり迫りくる怪獣、としてデザインされている。今作の人類側プレイヤーは、その怪獣レヴィアスがひそんでいる位置を探り、特定し、その行動を予測していって、その「動きを止める」ことが、目的となる。
結果的に、今作は、互いの意図を読み合う心理戦の要素が非常に強めだ。
前作にも心理戦要素はあったものの、今作はより手軽に心理戦が楽しめるようになっているのではないかと思う。読み合いを主体にしつつ、とてもシンプルに遊べるよう作られていて、前作と比べてもさらに手に取りやすい作品になっている。
人類アクションと怪獣アクション
人類側のアクションは「船コマ」が基点となる。
手札を使ってアクションを行なうのだけど、それぞれのアクションは基本的に船コマを基点に行なうようになっている。船コマから「ソナー」や「機雷」といったアクションを駆使して、レヴィアスの位置を把握し、その行動を制限していく、のだ。レヴィアス側は「機雷タイル」の置かれたマスを通り抜けられなくなってしまうため、包囲することによって、次第に動きづらくしてゆくかたちになる。
レヴィアス側のアクションの基点は「エネルギー」だ。
レヴィアス側は自由にアクションを選ぶことができるのだけど、この怪獣のアクション、どれもエネルギー消費が激しく、回復と消費をうまく調節しながらアクションを選ぶ必要が出てくるようになっている。
移動アクションですらエネルギーを消費させられるため、定期的に「エネルギーを貯める」という行動を挟んでおかないと、マスの移動すらできなくなってしまうのだ。
エネルギーという要素があることで、「捕食」というアクションが非常に大切になっている。船コマに捕食攻撃をしかけることで、対象の船をひとつ沈没させることができるのだけど、さらに、船を喰ってエネルギー回復までできてしまうからだ。
ただ、捕食することで位置情報はかなりバレる。捕食対象として隣接マスしか狙うことができないので、おおよその居どころを見破られてしまうのだ(とはいえ、すべての船コマを沈没させてしまえば勝利、だったりもするので、速攻で襲い続ける、という作戦も有効ではありそうだけど……)
捕食ともう一つ、レヴィアスには「津波」という攻撃方法もあって、この津波攻撃では、人類の沿岸部にある「陸地マス」を水没させることができる。津波攻撃によって5つある陸地マスのうちの4つを水没させることができれば、こちらも勝利になる(レヴィアスの勝利条件の1つだ)。
手札と相談が大切
プレイヤーのアクションは手札によって行なわれるため、プレイヤー人数が増えるごとにカードのばらけかたがおおきくなってくる。結果、アクションのタイミングがシビアになりがちだ。チームワーク必須だな、とここで思わされる。(手持ちカードについての相談も、このゲームでは可能ではあるのだけれど、その会話自体をレヴィアス側も聞いているので、あまり開けっぴろげに話してしまうと、相手にヒントをあたえてしまう)。
しかも、アクションの順序は、プレイヤー1⇒レヴィアス⇒プレイヤー2⇒レヴィアス⇒、といった形になっていて、レヴィアスの行動がほんとうに頻繁に挟まるので、アクションのタイミングが1つズレるだけで、ヒドイことになったりする……。という悩ましさが楽しさの1つである。
動きを見せることで位置情報が漏れてしまうレヴィアス、と、居場所を特定できれば勝てるけれど下手に近づくと喰われてしまう人類の、心理戦が、いま、始まろうとしているのであった。
それぞれの勝利条件
人類側勝利条件はただ1つ、「レヴィアスを移動不能にすること」。
基本的には「機雷」によってその周囲をすべて囲んでしまえば達成となる。
レヴィアス側勝利条件は3つ。「海上の船コマが0」「陸地4マスの水没」「山札がぜんぶ枯れて時間切れ」だ。
捕食攻撃によって船を襲うか、津波攻撃によって陸地を潰すか、海中にひそみ続けて時間切れを狙うか、といった三択を織り交ぜていくこととなる。
怪獣側、人類側、それぞれで遊んでみたけれど、基本的には、怪獣側に有利めなゲームバランスになっているんじゃないかとは思う。強敵にみんなで立ち向かおう、という雰囲気が強めである。人類側プレイヤーたちのチームワークがほんとうによくないと勝てないのではないか、というくらいの印象だった。
ラウンドごとのバランス
ラウンドごとに山札の内容の比率が変わるようになっていて、初期ラウンドではソナーカードが出やすいけれど、中盤からは機雷カードが出やすい、といった調整になっている。
この調整に寄り、まずは情報を集め、次に機雷を設置し、最後には追い詰めていく、といったおおきな流れが出来るようになっている
逆にレヴィアス側は、ラウンドの狭間に「進化」が起こるようになっていて、レヴィアスはレヴィアスで、後半になるほどより強力なアクションを行えるようになったりする(ただし、前作ボルカルスのときのような持続的な強化と違って、今作レヴィアスの進化は、「強力なアクションカードを一枚もらえる」というような形だ。行動時、一回だけ使用することができるタイプだ)。
この、限られた手札の中で、それぞれのプレイヤーがレヴィアスの行動を予測しつつ、その動きの選択肢を狭めていくように動かねばならない、といったバランスは、なかなかにシビアだったな、と思う。
読みをはずして一回でも逃げられてしまうと、かなり厳しくなる印象があったので、はずしてしまっていた場合の次善策まで考慮して動かないと駄目そう、とすら思った。
強敵レヴィアス
二回遊んでみて(4人プレイ)、これはほんとうに「どう逃げようとヤツを仕留めてやるぜ」くらいの気持ちでやらないと、追い詰められないんじゃないかなー、と思うところはありました。
「最悪こっち側に逃げられていたとしても、この機雷をこちらがわに寄せることで、あとあとなんとか対応できるんじゃなかろうか」くらいの案は持っておくべきだった……、という反省(このあたりは山札の内容の把握とかも大切になってきちゃう気はするけれど)。
最悪のときのために船コマ1つを囮にするくらいの次善策は必要だったかなー。
いやほんと難しい、というか、人類側でぜんぜん勝てなかった悔しさがけっこう残っているので、できればまた遊んでみたいところ。
怪獣側で遊んでみて、相手の裏をかき続けるのは楽しかったけれど、プレイヤー側の視点で見たら、あれを追い詰めるってほんとうに困難だったんじゃないかな、って戦慄してしまうところもある(というくらいうまく逃げられた気もする。人類側の手札の偏りに助けられただけな気もするけれど)
そういう意味でいえば、ゲームに慣れている人が敵側(怪獣側)をやったほうがよい、といったよくあるアドバイスは、今作だと逆なのかもしれない。慣れている人のほうが人類側で、相手を追い詰めていったほうがよいのかもいしれない。
ちなみに、一対一で行なうプレイがかなりおもしろい、という評判も聞くことがあって、それはなんか、確かにかなりおもしろそうな気はします。3人でのバランスとかも試してみたいな。
最初に遊びやすいKaiju on the Earth
という感じで、Kaiju on the Earthプロジェクト、最初に遊んでみるならここからがよいのではないでしょうか、と思える『レヴィアス』のススメでした。『スコットランドヤード』的な追跡劇を、これくらいの軽さで遊べるというのも、ほんとうにありがたい。求めていたゲームという感覚はあります。
Kaiju on the Earthプロジェクトに関しては、第3弾である『ユグドラサス』の情報もちょうど出始めていて、開始されたばかりのクラウドファインディングも非常に好調の模様です(2020年11月16日の時点で「日本国内で発売するボードゲームのクラウドファンディング」として史上最高額を更新中とのこと)。
ユグドラサスは「プレイ時間1日」を謳う超重量級、といった売り文句も気になるところで、正直、めちゃくちゃ楽しみにしています。それまでにレヴィアスもボルカルスももう一回くらい遊びたいなー。
レヴィアス / LEVIATH