プレイ人数 : 1~4人 (拡張により5人)
プレイ時間 :45 ~ 60分
対象年齢 : 13歳~
作者はContainer、Trans AmericaのFranz Delonge。
惜しくも50歳でこの世を去ったが、Container発売後ゲームの調整を共にしながら再出版を画策していたMercury GamesのRichard “Doc” Diosi氏によってContainerとともに豪華な記念版が出版されている。
存命中にほぼ完成していたContainer10周年記念版と違い、Big City20周年記念版は拡張のコアデザインが終わって調整にはいる、という矢先にDelonge氏が亡くなってしまいあとを継ぐ形で調整を続けて出版にこぎつけたそう。
発売スケジュールに関して製造工場とのトラブルもありスケジュールが大幅に遅れがでたが、亡き友人の想いを潰さぬよう名作をしっかりと仕上げてきた。
今回はそんなビッグシティ20周年記念版を紹介する。
目次
どんなゲーム?
元は1997年にプロトタイピングされ、1999年に出版された。
ゲーム終了時のリッチな見た目とDelonge氏らしい経済活動を上手にデフォルメしたシミュレーションから無冠ながらとてもファンの多い作品だった。
今回20周年版では魅力的だったコンポーネントをさらに豪華にし、ボードやカードデザインを一新。
新たな建物とリゾートタイル、プレイ可能人数を5人に増加させる拡張セットを追加で発売でした。
土地の転がしあいをしながらより有利な立地を得て、人気のでる建物を建てていく。
この土地の転がしあいと立地による高騰をとてもうまくデフォルメしている。
システム
流石に前世紀の作品で、ルールは今となってはかなりシンプルな部類。
基本的にカードをプレイしてそのカードの番号の土地に建物を建てるだけで、連続した土地をもっていればより大きな建物がたてられる。
そのため土地の所有権(カード)をドラフトして土地を転がし、より大きな、またはより立地の良い土地を得ていく。
ドラフト部分が交渉に変わっているが、同年出版されたChinatownとよく似たシステムと言える。
あちらは建物に立地による効果がなく種別により収入がかわるといったものだったが、ビッグシティでは周辺の建物によって建設時の価値が変わる点が異なり、ここが妙味になっている。
例えば公園に隣接した住宅やオフィスは価値があがるが、工場に隣接すると価値が下がる。
そのため人の集めていそうな土地の周辺に何を建てるかも駆け引きの要素となる。
土地のドラフト
何も建てず土地を遊ばせておくというのは不動産投資家としては耐え難く許されない状況なのだが、その再現をデフォルメして非常に綺麗に再現している。
カード(土地)は各プレイヤー5枚までしか所持が許さず、建築に使用するとさらに手札が減る、手元に残ったカードは毎ラウンド強制的に1~2枚、入札とよばれるドラフトに参加して提出しなくてはならい。
この土地を握り続けられない事がゲームの面白さに非常に良く作用していて、人の欲しい土地を抑え続けていると自分の土地が握れない、同様にまだ市場にでていない将来性のある土地を握り続けると自分の手札を圧迫しつつ、他人には現状での広い選択肢を与えてしまう、と言う非常に悩ましい展開になる。
ドラフトも独特で、公開入札と非公開入札二通りの方法で参加することになる。
単純にカードを表で出すか裏で出すかの差なのだが、表で入札した場合、他のプレイヤーが欲しいカードであれば当然即入手されてしまう。
入札されたカードは公開で入札したプレイヤーが優先的全カードから好きなものを入手できるので、都合の良く入手させないために非公開にしたい、が・・・そうするとカードの取得順が下がるので余ったゴミのような土地をつかまされる。
単純ながら入札フェーズごとに悲鳴が聞こえるとても悩み甲斐のあるシステムだ。
立地による価値の変動
各プレイヤーは最初は思い思いに手なりに建設をすすめていくのだが、段々と密に疎に、場合によっては路面電車が引かれ交通の便にも差がでてくる。
そうなると自然と密なエリアに商業施設を建てたくなり郊外には工業施設を建設したくなってくる。
大きな住宅を狙っている気配を察すればその周辺の環境を悪化させる手も打てる。
そうして区画開発がいかに様々な思惑で綺麗な街並みになったり汚くなったりしていくかを追体験できるのも面白い。
ゲーム終了後の景観
建築パターンは恐らく億の桁では済まない組み合わせがあるので、最終的にそのメンバーが作ったそのメンバー達だけの街ができあがる。
1997年のオリジナル版から終了時の景観を楽しめるゲームとして定評があったが、今回の20周年記念版はさらにパワーアップしてゲームが終わるとみんな何枚も写真を撮るくらいに綺麗な街並みが作れる。
難点は?
ゲームとしての欠点は好みの問題以外さほどないのだが、豪華なコンポーネントの裏返しに箱がかなり大きい。
これは棚の隙間を考えながら売り買いを繰り返してるヘビーなボードゲーマーにはなかなか深刻な問題であると思う。
また、そのミニチュアの数の多さから重量も相当なものでゲーム会に持ち込むにはそれなりの気合が必要になりそう。
そして値段
定価では拡張セット込みでおよそ3万円、コンポーネントの質を見れば納得はいくもののやはり単純に高価である。
さらに度重なる発売の延期や同時発売予定だった拡張セットの発売の遅れなど、プロモーションにまつわる痛手もあり認知度はさほど高くないように思う。
だがこの点は日本のユーザーには良い方にはたらく事となった。
印刷データ納品のスケジュールが伸びた関係で当初予定のなかった日本語ルールブックと拡張までセットになった日本語サマリーを同梱する余裕が生まれ、公式に日本語が対応原語として追加される運びとなった。
したがってパッケージは英語版のようにみえるが安心して購入できる。
まとめ
実績十分の名作がさらに豪華になり、ファンであり友人であるRichard Doc Diosi氏が作者の想いを壊さぬようゲームを拡張した正当なリメイクといえるので期待してプレイに臨んでよいと思う。
致命的な欠点の値段
国内では同時期ににエクスパンシティ、ERA、と立体建造物を建てるゲームが重なって発売されたこともあり出足が鈍かったせいか執筆の2020年12月現在、なんと70%近くカットされて拡張込みで1万円程度で流通している。
これだけの豪華なミニチュアコンポーネントでゲームもしっかりとしているものが拡張込みで1万円前後、店頭在庫が枯れれば高騰は間違いないので買わない手は無い。
この出足では再販は絶望的。
安いうちに買おう!
#12/24 20:00追記
記事公開から半日、いくらか売れたようで値段がどんどん上がってます。
20時時点で本体が14,100円、定価からするとまだかなりの割引率ですがどんどん値上がりしていきそうです。
できるだけ感覚そのままより言語化、体系化して伝えるレビューを心がけてます。