プレイ人数 : 2~5人 (リテイル版は4人まで)
プレイ時間 : 60~90分
対象年齢 : 15歳~
ジングルベーーーール!
ボドゲ紹介アドベントカレンダーにあわせて私的2022年ナンバーワンゲーム、Città-Statoをレビューするよ!
前日は何人ものゲーマーの方々が今年ナンバーワンにあげていたファーストラットを豊田えりさんがレビューしてくれてるよ!
僕はいろんな人に面白かった自慢されたのに機会がなくて遊べてないのでめちゃくちゃありがたい!
デザイナーはKepler-3042のSimone Cerruti Sola、イタリアのgiochixからクラウドファンディングを経て発売。
独創的なシステムの組み合わせとガチガチギチギチにキツいプレイ感、中期戦略と長期戦略どちらもしっかりやらないとグズグズになる最高にプレイヤーを信頼したデザイン。 ああ、もう最高!
どんなゲーム?
イタリアの海洋共和国の元首となり、自国の政体の安定と軍略、商業的繁栄を目指し競い合う。
羅列すればメカニズムはバッグビルドやワーカープレイスメントと、一見フレイバーとともにヘヴィーゲームによくある代り映えの無いものにみえる。
しかしメカニズムひとつひとつをとっても独創的、トータルのプレイ感は他にはない凄く新しいものになっている。
なにがそんなに新しいの?
ゲーム開始時に配布される国家能力と秘密裏に目指す政体
このゲームの新しさを語るにはまずゲームの流れを説明しないとならない。
まずは各プレイヤーには国家が割り当てられそれぞれ独自の能力があたえられる。 この能力を駆使して(あるいは無視して)他国に対する有利を取れる展開を考える必要がある。
ここまでも割と当たり前のながれだが、さらにゲーム開始時に目指すべき政体が各プレイヤーに秘密裏に与えられる。 細かいフレイバーの説明は無いのだが独裁制、寡頭制、金権主義といったところだろう。
全プレイヤーが中道にあたる寡頭制からはじまるが、実行するアクションや取得するカード、他プレイヤーの行動や戦争結果等により政体はぐるぐると右へ左へと動く。
これをコントロールし最終的に目指すべき政体に落ち着ける必要がある。
さらには得点も独特。
単純なVP制ではあるのだけど、ゲーム中に得点したものゲーム終了時得点が別々の集計となり、低い方の得点が自得点となるのだが条件を満たせば高い方の得点を自得点とする事ができる。
さらに王冠と呼ばれる政治力のようなものをゲーム中に得る事ができ、これも得点のひとつと考えられる。
基本的に条件を満たしたもの同士の戦いとなり、満たせなかったものは脱落すると考えて良い。
その条件が
・ゲーム開始時に各プレイヤーに与えられた目指すべき政体の確立
・低い方の得点と高いほうの得点の間にある王冠の数を数え、獲得した王冠がその数を上回っている事
と、ゲーム開始時から終了時を見据えて得点を重ね、低い得点と王冠で埋められる範囲でしか高い方の得点を取らない、という長期戦略が極めて重要なゲームになっている。
さらに独特バッグビルドとワーカープレイスメント
国家の運命を左右するバッグビルド要素と市場を兼ねたワーカーを配置するアクションポイント
このゲームはワーカーに6色のワーカーがあり、それぞれ取れる異なるアクションを実行できる。
が、しかしこのワーカーは毎ラウンドバッグから引くのでバッグの色をどのように構成していくかで自分の目指す政体や得点に大きくかかわってくる。
さらに毎ラウンド使った最初のワーカーは供給として市場に開放され、この量が市場でのワーカーの価値になる。
すなわち自分が真っ先に打ちたい分野のアクションは他プレイヤーにワーカーを買われ、競合を増やしまう可能性がある。
ワーカープレイスメントにありがちな「早い物勝ち」にそのアクションを取れるワーカーの喪失、さらには他のプレイヤーにそのアクションを取れる権利すら与えてしまうデメリットを付随させることで味わった事の無い絶望的な厳しさに直面することになる。
毎ラウンド訪れるこのジレンマとの戦いは吐き気を催すレベルで辛い。
そのラウンドでとる2回目、3回目・・・とアクションごとに同色のワーカーを2個、3個・・・と増やさなくてはならず、安全にアクションを打つならワーカー喪失はしないかわりに沢山の同色のワーカーをストックしなくてはならない。
無常。
さらに独特すぎる拡大要素
ディスクを移動することで自国を強化して拡大を目指す。
資金調達能力やバッグから引けるワーカーの数、戦争による得点や政治強化等など
よくある各アクションのパワーを強化していき拡大させていく要素の他、政治活動の他に、毎ラウンド獲得できる資金、バッグから引けるワーカー、ワーカーそのもを獲得する、政治的影響力を高め政体を変化させる力を強める等、他ではみられない強化要素がある。
特にフレイバーの共和制な部分を活かし、政治的影響力は自分だけにとどまらず共和国の元首たち、すなわち全プレイヤーに影響する攻防一体のアクションになっている。
さらにこの強化にあたる内政力は共和国全土で共有、すなわちラウンドごとに強化できる回数がきまっており、全プレイヤーでその回数を共有することになる。
ここにも早取りにあたる要素があるのだが、当然初手番で強化アクションを打った場合にはその色のワーカーは市場に放出される事になる。
そして中期戦略
右側のトラックが共和国の内政能力。全プレイヤーはこの共用の内政力を消費して強化を行う
先に書いたように、このゲームは長期戦略が極めて重要なゲームなのだが、その展望を実現するためには中期的な視点が重量となる。
と、言うのも序盤と中盤では重要になる能力やアクションが変わってくるため、どこかのタイミングでバッグの中のワーカーの色構成を変えたり、強化する個人アクションを変えていく必要があるからだ。
どこまで特定の色のワーカーに染めていくのか、どのタイミングで転換を図るのかを他プレイヤーの動向を見つつ決めていく必要がある。
前述の通り強化できる回数はラウンド内で全プレイヤーで共用、強化アクションを打つタイミングも他プレイヤーの動向を警戒しつつ計画的に行っていく必要がある。
カードの獲得と焼却
国家繁栄の柱の1本になりえるカードの獲得。
自国に効果が薄く他国に利するカードは焼却して特別なアクションに充てる事ができる
このゲームには全元首に対する念書としてカードが公開され、アクションを打つ代わりに念書の指示を実行し念書を獲得する事で得点やカード効果の発動をする事ができる。念書に従ず念書を焼却し自国の強化や一度きりの強力なアクションを行う事もできる。
カードには様々な効果があるものの、2種類の得点のうちゲーム終了時得点の大部分はカードによりもたらされるので非常に重要な要素になっている。
終了時の得点が低すぎれば必要な政治力(王冠)が多数必要になり根本的な得点を高くしている余裕がなくなる、あるいは政治力そのものが足りなくなる恐れがあるからだ。
とは言えアクションや強化の代わりにカードを獲得していくので政治や強化に関する行動をしない事になるのでどの程度までカードを獲得していくのかも悩ましい。
念書を燃やした場合の強化は非常に強力な上、他のプレイヤーがその指示を実行する事もできなくなるのでカットする意味も兼ねている。 獲得すると有利であったり、そもそも国家計画に必須レベルの方針の念書を燃やされた場合致命的なダメージを負わされる場合もある。
ここまでをまとめると
既存メカニズムをうまくアレンジして組合せ、メカニズム単体でも複合したシステムとしても斬新なプレイ感になっている。
さらに漫然と場当たり的に眼の前の今現在強いアクションを打つのではなく、しっかり計画してアクションを打つことに重要性があり、きちんとした計画にはそのリターンが用意されている。
思考量が多すぎとも取れるが、思考に対するリターンというゲーマーズゲームの重要要素をとてもしっかり満たしている。
良くない点は?
とは言え、1年を通してナンバーワンと思っているゲームにも弱点があったりする。
まずはカードバランス。 1枚1枚は多少の強弱はあれ方針とのマッチ以上には大きな影響はないのだが、成立すればほぼ勝ちが確定してしまう位強いコンボが存在している。 これは後述する人数バランスで殆んど気にならなくなるのだが人数次第ではコンボの構成カードを抜くことを検討するレベルだと思う。
そして人数バランス。
このゲームはクラウドファンディングの特典で5人用の拡張セットが付属している。
しかしボードには5人向けのラウンド構成表が印刷されていたり、5人前提でバランス調整されているのでは?と思う程に4人までと5人で味わいが違う。
先の強力なコンボさえなければ4人まででも十分面白いゲームではあるのだが、このゲームは5人になるととたんに凶悪なゲーム展開に変貌する。
筆者のおすすめはもちろん5人プレイだ。 逆を言えば5人プレイでないと本領が発揮されないのは結構な弱点でないかと思う。
カードと戦争
少々長いが5人でなにが大きく変わるかも合わせて解説する。
先に述べたカードは毎ラウンド色ごとに1枚公開される。6色あるので6枚の公開なのだがプレイヤーは強化のための焼却か得点およびカード効果発動のための指示の実行どちらかは最低でも実行したい。4人だと半分のプレイヤーは2度カード選択の機会が与えられるが、5人になるとスタートプレイヤー以外はほぼ1度しか選択の機会が無い。
1手番目でカードの獲得か焼却を行わない場合には他プレイヤーに選択の機会を譲る事になるだろう。5人プレイではゲーム終了時の得点を上げる数少ない機会を他人に譲っている場合ではないのだ。
この事がワーカーを犠牲にする最初の1アクションで積極的にカードを獲得していくモチベーションになり、かつその色のワーカーが減るので同色の相性の良さそうなカードを獲得しにくくなるジレンマが強くなる。
バッグから引いたものも含め保持しているワーカーは公開なので、それを踏まえた他人の足元を見ながらのカード獲得合戦がより激化する。
カードには強力な効果が多く、取れるなら毎ラウンド1枚はカードを獲得するのが前提となるので半数以上のプレイヤーがゆるゆると2回カードを集める機会のある4人以下のプレイと全く違った展開になる。
選り好んでカードを取る余裕がほぼなくなるので前述の強力なコンボの成立も極めて難しくなる。
どうやってもカットできない局面にはそうそうならず、やすやすをコンボを成立させるヌルい場であったなら許した他プレイヤーの責任と納得感がある。
ラウンド終了時に公開される各プレイヤーの派遣した軍隊の規模。 この結果により酷い目にあわされる
そしてこのゲームの戦争行動は元々あまり強くない。場合によっては点数が減る等のデメリットがあり、さらにラウンド中戦争に参加しない事により内政を行ったという事で好きな政体に1マスぶん移動させる事ができると言うメリットがある。
戦争に参加した国(プレイヤー)はラウンド終了時に残っているカードを1枚獲得できるのだが、4枚全て獲得されているとなにも獲得できない。
と、デメリットもありメリットの棄却すら起きるのであまり積極的に戦争に参加したくはないのだ。
ただし戦争に最も貢献した国だけは別で、次のラウンドに登場する予定のカードから1枚を獲得できる。
ゆるゆるとカードが引ける4人以下では誰か1人が戦争に参加したら、戦争で1アクション取るより他のカードを獲得獲得しにいって戦争貢献度2位になってアクションの無駄、さらには内政棄却のリスクを取らない展開が多くなりがちなのだが、5人になるとそもそもカードの価値がぐんと上がるので、自分がカードを獲得したいのはもちろん、他人に次ラウンドのカードから好き放題選ばせる権利を与えないためにも本来は積極的に参加したくない戦争に半ば強制的に参加させられる。戦闘国家の道を歩む選択もあるが政体と合わなかったり戦争による加点は終了時得点には一切かかわらないため、戦争に特化して得点する道は相当に厳しい。
戦争の貢献順位決めは握り競りに似ていて裏向きに戦力のかかれた師団コマを戦場に各々配置する。
大きな数値は大きな維持費がかかるので最小戦力で1位を取りたいが、裏向きの配置がこれを悩ましくする。
なんとしても欲しいカードが次ラウンドにでてきたとき、先に裏向きに配置された際の悩ましさと言えばそれはもう厳しい。
逆に1戦力で相手に最大戦力を使わせた爽快感は脳汁ブシャブシャである。
カード獲得が厳しい5人プレイではこのような展開が起こりやすいので、やはりプレイ時間が伸びても、クラウドファンディング版でしか遊べなくても5人プレイを推奨したい。
総まとめ
4人以下でもコンボを使わない、あるいはコンボ構成カードを抜くなどすれば独特のメカニズムとプレイ感、ガチガチのインタラクションが楽しめる。
どのアクションや道を選んでもぶつかるジレンマと苦渋の選択の塊、苦悩苦悶苦肉の恍惚。
さらに5人だとそれはもう最高の体験ができるのでイタリア共和制国家の運営と言う馴染みないテーマでも問題ない、と言う方は是非遊んでみてね!
4人でバランスの悪さやヌルさを感じた方も是非5人でやりなおしてみてください。
明日は爆速で中華料理を作るゲーム爆速飯店をなのまる|100xさんがレビューしてくれるみたい。
アクション性のあるゲームは他の人の手の骨を砕きそうなのであまりプレイしてないので楽しみ!
できるだけ感覚そのままより言語化、体系化して伝えるレビューを心がけてます。
Città-Stato / チッタ スタート