デザイナー Sébastien Dujardin / Xavier Georges / Alain Orban
プレイ人数 1-4
プレイ時間 60~120分
対象年齢 12+
トロワ、トゥルネーのチームの9年ぶりの新作。
「トロワ」のダイスプレイスメント、「トゥルネー」の個人盤面内政、このゲームの制作途中に出来上がったシステムを切り出し先行リリースされた「ソレニア」の開拓、と過去作のシステムを取り込んだ集大成。
当然のように要素はモリモリ、処理とやり事が沢山のビッグゲーム。
過去の名作の影を振り切れるかも大きな注目ポイントの今作をレビュー
バックストーリー
地球上の資源を使い果たした人類は新天地を求めて移民船ブラックエンジェルに乗り込みコールドスリープに入る。
移民後の主導権を争う各国は、新天地到着までの間にそれぞれのAIを稼働させ、最大限の貢献を目指す。
プレイヤーは各国のAIとなり移民をサポートし、移民後の主導権を開発した国家にもたらすことを目指す。
ざっくりどんなゲーム?
船内でエネルギー(ダイス)の抽出をし、自AIの開発強化、船体のメンテナンス、外敵との戦闘、異星人との交流、新天地に向けての航行へと振り分け、人類にメリットある行動であれば得点となる。
元のシステムを採用している各ゲームをプレイ済みであれば察しがつきやすいが未プレイの方のためにざっくりと説明。
船内
トロワ式のダイスの取り合いと振り分けを行う。
自ワーカー(AI駆動のロボット)の配置数だけ各色のダイスを振り、出た目の強度で各ダイス色のアクションを行える。
リソースを使うことによって他人のダイスでアクションできたり目のコントロールができるのはトロワを踏襲している。
このダイスを振り分けてソレニア式の航行と周辺開発(異星人との交流)、トロワ式の外敵の排除と内政、トゥルネー式の自ボードでの内政(AI開発強化)を行っていく。
個人ボード
こちらは自AIを強化していく。似たところはあるもののトゥルネーの上書き式と若干の差異と拡張があるタイル押し出し式のパズルとなっている。
このパズルだけでも相当のランダム要素があり、意思によるコントロールしきれるのか絶妙のラインの得点方法が採用されている。
複雑なので少し触れるだけにするが、パズルの結果盤面から排除されたタイルは種類により得点になるが上限が低く、別のパズルにより上限の上昇を図らないと非常に弱い得点源にしかならない、ので複数のパズルを運に振り回されながら解いていきさらに生産が拡大するよう盤面を育てなくてはならない。
さらにこのタイル配置パズルは手番ごとに行えるダイス以外のアクションの強化とも絡みがあり、得点との両立を考えると非常に悩ましい。
宇宙空間
プレイヤーがダイスの振りなおしをするたび、ソレニア式にブラックエンジェルが目的地に向かって進行する。進行により目的地に到着するとゲーム終了となる。
進行中はブラックエンジェルから交流船を発射して異星人と交流をはかり、人類にメリットのある行動により様々な恩恵を受けることができる。
この部分だけでもテーマを変えて「ソレニア」としてリリースされた程の要素で、インタラクションのある生産パズルとして十分考えどころがある。
豊富な勝ち筋と展開
ここまで述べた要素全てに無駄なアクションがなく、他プレイヤーの動向をみながら終了タイミングもコントロールしつつ、絡み合った要素からゲームを構築していく、全てを作り上げる自由さと窮屈さを同時に味わうことができる。
とにかく要素が多く、どの経路でも得点ができ、あちこちで拡大要素もみられる。しかし散漫にプレイするとゲーム終了までなんの意思もなく適当にリソースと得点が少しだけ入るような残念なプレイになる。
ある意味リプレイ前提のゲームでセットアップのランダム性や他プレイヤーとの行動バッティングによって豊富な勝ち筋から最適と思われる行動の予測と選択が必要となる。一桁のプレイ回数ではあるが毎回違う得点方法で挑んでも別の方法があった・・・と気づかされる。
臨機応変なプレイで他プレイヤーを出し抜く事が好きなプレイヤーにはたまらないゲームに仕上がってるのではないかと思う。
そんなに良いところばかり?
残念ながらそう言い切れない。
細かい処理が多くいくらかルールブック外の明確化も必要な場面がある。
トロワ語と揶揄されたわかりにくいアイコンはかなりマシにはなったとは思うがまだまだリファレンス無しでは数回プレイした程度ではスムーズなプレイができない程度にわかりにくい。
要素が多く筋が豊富でリプレイ性が高い事は、裏返せば見透しが悪く初回はなにをやっていいかわかりにくい。
ビッグゲームなので致し方ない部分ではあるが、人によっては胃もたれする程の要素の多さ。
過去作と比べて?
熱狂的ファンもいるトロワやトゥルネー、その要素を多く引き継ぐ今作は続編として期待されていて、比べられる事は避けられないろ思う。
が、しかし。 同一システムが組み込まれているだけでゲームとしては全く別のゲームになっていると筆者は考えている。
少し言い過ぎかもしれないが「はげたかのえじき」と似たバッティングシステムがあっても「ブルームサービス」や「魔法にかかったみたい」ははげたかのフォロワーとも比べるべきゲームでも無いのと同じように、過去作と比較できる遊び口はほとんどみあたらない。
従ってこのゲームに過去の恋人のごとくトロワやトゥルネーの影を求めても恐らくその影を見つけることはできないんじゃないかと思う。
同じ服や髪形をしていても新しい恋人は別の人間なのだ。
このゲームを過去作の続編的なものとしてプレイするとおおきな肩透かしを食らうのではないかと思う。
総評
何度も繰り返すが要素も多く、初回の見通しがあまりよくない。
それでもプレイしていくうちにどんどん新たな得点要素や拡大方法が見つかり、あちこちで考えさせられるポイントが存在する。
ただしトロワやトゥルネーの影を求めると本当に全く違う遊び口なので期待外れと言うことになると思う。
最低数回のリプレイを厭わず、慣れるまでわかりにくい細かい処理を乗り越えて長めのプレイ時間のビッグゲームに向きあえるプレイヤーには強力におすすめできる。
テーマもユニークでコンポーネントも豪華。 ピントの合う人にはかけがえのない一本かと。
それでもやはり人を選びすぎる部分があり、点数は低めにつけざるを得ないかな
できるだけ感覚そのままより言語化、体系化して伝えるレビューを心がけてます。
Black Angel / ブラックエンジェル