ブルーラグーン

レビュー黒菱 シンカ


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4
On 2020年6月15日
Last modified:2020年7月17日

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 プレイヤー全員が一様に黙りこくってボードを見つめながらうんうん唸っているような光景が好きだなと思う。この悩ましさが皆様を楽しませちゃってるんだろうなー、みたいな眺めを楽しんでいるところがある。ボードゲームが特別好きな理由の一つだと思う。ボードゲーム以外だとあんまり出くわせない光景なんじゃないかなとも思っている。こういったボードゲームに絡んだ嗜好のツボというのは人それぞれではあるのだろうけど(悩ましさが楽しめる度合いなんて人によって違って当然な気はする)、とにかく、そういう場に遭遇するたびに、わ!楽し!と脳内では叫んでいるところがあります。

 ここ最近だとクニツィア『ブルーラグーン』がそういった雰囲気を醸し出していて素敵だったなー、と思い出したので、紹介を書きます。

英語版パッケージ

デザイナー: Reiner Knizia
イラスト:Tomasz Larek
プレイ人数:2~4人
プレイ時間:30-45分
対象年齢: 8歳~

 綺麗な南の島と海を舞台にした陣取りゲーム。部族コマを繋いでいくことで自分の領地を決めて奪い合う。囲碁が背景にあるようなメカニクスだ。アブストラクトと呼べるタイプ。運要素も秘匿要素もなし。

囲碁感のあるクニツィア作品

『砂漠を越えて』 ──ラクダコマを置いてつなげていく

 囲碁感のあるクニツィアのゲームといえば有名どころとしては『砂漠を越えて』があるかと思うけれど、『砂漠を越えて』と比べると、こちらはまず得点要素が大幅に増えていて、さらに、前半戦/後半戦に分かれたところ、あと、島ごとという区切りがあるため奪い合いが区域ごとになりがち、といった盤上の違いも影響して、プレイ感はけっこう違うものになっている。さらにいえば、南国の海と島を舞台にしているという見た目の美しさから来る印象面での差異もおおきかったりする。緑と青の色合いって美しいなと改めて思わされる(砂漠も好きです)。


『バビロニア』 ──都市ごとで囲んだコマのマジョリティ争いが行なわれる

 あわせて紹介しておくと、囲碁味がありそうなクニツィアゲームとして、『ブルーラグーン』よりもあとに発売された『バビロニア』がありまして、実はこちらも非常に好きです。『バビロニア』のほうが好きくらいまでありうるけれど、日本では流通していないため、現時点では買えていなかったりする。『ブルーラグーン』より多少ルールが増えて(配置するコマが複数種類になって、悩みどころが増えた)、ちょっとだけゲーマー寄りになっているゲームだ。こちらだとチグリス・ユーフラテス流域で陣取りをすることになる(『チグリス・ユーフラテス』というボードゲームとは作者以外は関係ありません)。戦略面では、『ブルーラグーン』と比べると、相乗り、を活用していく構造が追加されていて、ここもまたけっこう考えどころが変わる雰囲気かな。好みは人それぞれだろうけど、まあ、どっちも好きです。『バビロニア』ほんと欲しい。

二人対戦の風景

 というわけで『ブルーラグーン』にしろ『砂漠を越えて』にしろ『バビロニア』にしろ、一手一手の攻防が地味で、渋いけれど、とはいえ濃密で、うーんどちらを優先すればよいのだ、という悩みに逐次さらされ続ける、いわゆる、ガチガチ、といった形容が頭に付くゲームだと思います。特にプレイ人数が少ない場合はそれが顕著。トッププレイヤーを誰かしらが妨害しなければならない、みたいなこともまあ起こるので、そのあたりのやりとりで好みが分かれることはあるんじゃないかなとも思う。こういうのは同卓しているプレイヤーとの相性もあるし、一概に好き嫌いでは話せないとも思うけれど。

こちらは三人戦。いい感じに流れが分断される……

 ゲームが前半戦と後半戦に分かれることは前述したとおり。
 ルール的に、前半戦は探索フェイズと呼ばれ、後半戦は居住フェイズと呼ばれている。つまり、前半は辿り着いた島々を探索していく流れがフレーバーになっていて、後半戦は住み着いた島々での暮らしがフレーバーになっているのだと思う。というようなわけで、前半戦は「海」を起点に部族コマを伸ばしていくことなって、後半戦は「村」を起点に部族コマを伸ばしていくことになっている。

探索フェイズと居住フェイズ


 前半戦で、海から伸ばす利点は、起点を自由に選べることだ。途中で好きに追加することができる。あそこを伸ばされるとマズイ、あそこを妨害しなければならない、という時であっても、まあなんとか間に合ったりする(あわてて駆けつけたところでそれほど優位があるかはまた別)。ただ、海に置かれた部族コマは島ごとのマジョリティ争いなんかには加えられないため、ちょっとだけ無駄が出来てしまう。というのがジレンマの一つになっている。島々を一本の部族コマの列でつなげよう、というネットワーク構築要素もあるので、そこと噛み合わせられればまあ最善なのだけど、あわてて置いた一コマが有効に働いてくれるかはあやしいところだし。
 後半戦、村から伸ばしていく利点は、狙いどころが決めやすいところだろう。前半戦で置いた村コマがつながっていくような形になるので、簡単に言うと、村コマを多めに置いていたあたりはそもそも自分が支配しやすいフィールドになっていて、全体的な戦略面での強弱がわかりやすい。判別しやすい。もちろんそのぶん、弱い箇所には手を出しにくくなってしまうのだけど、そのあたりを踏まえつつ部族コマを置いていくことができる。書いてはみたけれど、これ、利点と言えるかは微妙な気もする。前半戦と逆側で言えば、妨害されない時はぜんぜん妨害されない箇所がある、ということは言えるかな。届かないところには届かない。敗北気味のときは絶望になりますが……。
 
 

得点要素

 得点要素がたくさんあると書いたけれど、実際のところ、得点要素は6つ。この6つそれぞれを合算したものが得点になる。


【1】8つの島すべてに部族コマ(もしくは村コマ)を配置していれば20点/7つの島なら10点。
【2】部族コマ(もしくは村コマ)が最も長くつながっているところの島1つにつき5点。
【3】島ごとに置かれた部族コマ(村コマ)でのマジョリティ、島ごとに決められた勝利点(6点〜10点)を得る
【4】同じ資源4個集めたら20点/3個で10点/2個で5点
【5】4種類の資源1つずつ1セットで10点(一回のみ)
【6】特殊資源であるティキ像1個につき4点

村コマだけ残して居住フェイズ(後半戦)の始まり

 前半戦が終わったら、村コマ以外をすべてリセット。ランダム配置である資源を置き直して、後半戦として、もう一度同じゲームを始める。
 一ゲーム終わったらちょっと理解した気持ちになってもう一ゲーム遊んでみたくなる、という気持ちは、面白いゲームを遊んだあとなら誰でも多かれ少なかれあったりすると思う(それでももっとやってみたいゲームがあとが閊えていることもまた多々あるでしょうが)。こんどはああいうことをやってみたいな、とはよく思う。みたいなことが、最初からルールの中で既定されていて、後半戦としてもう一度遊ぶことになる、遊ぶことがゲーム全体に組みこまれている、というのは、なかなかよい、これはこれで楽しい、と思わされるところはかなりあったりもしました。こういうのも新鮮。ここに面白味を見出してルールに組みこんでいるのだとしたら素晴らしいな、と思いました。

まとめ

 ルールはシンプルなので、渋味のある陣取り的な攻防を楽しめる人であれば初心者であっても比較的薦めやすいし、フィールドの奪い合いの悩ましさもほどよいバランスになっていると思います。見た目でわくわくできるのでフレーバー無しのアブストラクトだと出しにくい時なんかにも活かせそう。2人、3人、4人、人数それぞれでそのあたりの感覚がけっこう違うのも楽しい。悩ましさと楽しさのバランスがちょうどよさそうなのは3人かなという気もしますが、2人でガチゲー風味に遊ぶのも好きです。前半戦だけで終わらせてサクッと遊ぶ遊びかたも出来ます(こちらも推奨されていますし、前半戦終わった段階で他のプレイヤーの様子見て、調整できるところも素敵です)。ぶつかり合い邪魔し合いが好みに合いそうでしたらかなりおすすめ。

ブルーラグーン

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