ツィクスト / TwixT

レビュー黒菱 シンカ


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5
On 2021年4月8日
Last modified:2021年4月7日

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ツィクストに対する気持ちはもう敬愛くらいになっている気がする。ほんとうに好きなゲームだし、心底、見事だ、って思わされるゲームだ。愛好家が多いのもわかるなと思う。

入手困難な状況が続いていたのだけど、このたび、GPよりようやく再販がされた。お試しで遊んでみるための紙ペン用PDFなんかも公式サイトで配布してくれている。ルールや戦術もこちらで確認可能だ。

正直、ぴんと来たら遊んでみてほしい。刺さる人にはほんとうにぶっ刺さるゲームだと思う(自分もその一人である)。

GP公式サイトでルールや戦術も紹介されている

http://www.gp-inc.jp/boardgame_twixt.html

将棋やチェス、囲碁、といった、運要素も秘匿要素もない、いわゆる「アブストラクト」ゲームの一つではあるので、好みも分かれるところではあるのだろうけど、それでも、間違いなく定番として世に広まってよいゲームだと思うので、遊びやすくなったことはたいへん嬉しい。遊べる機会が増やせるならとても嬉しい。

囲碁にインスパイアを受けて作られたと言われるツィクストだけど、囲碁よりわかりやすいかな、とは思う。わかりやすいというか、見やすい。

囲碁は、なんというか、置かれた碁石が周囲に向かって波動とか波紋のようなもの(イメージ)を張り巡らせて、「このへんは俺の領地だぜ!!!!」ってめちゃくちゃアピールしてくるゲームだと思っているのだけど、とはいえ、ぱっと見では、やはり、そのへんがわかりづらい、とも思う。

この石とこの石がつながっているとか、このあたりは固くて攻められない、なんてことが、熟練者同士の戦いであればあるほど余計に見えづらくなったりする。

その囲碁の見た目からの感触のわかりづらさを、ブリッジという要素によって可視化し、わかりやすくしてくれたのが、ツィクストだろう、なんてふうに思う。つながりが見えやすくなって、一手先、二手先が、想像しやすくなっている。

左上、白のブリッジによって、「切断」されただけで、もう絶望している

ただ、その分、ちょっと想像しただけで、不穏な空気を感じ取りやすくなってしまっているのも確かだ。

ボードの上に、さくっと最初の2本のペグが突き刺さっただけで、はちゃめちゃに澱んだ空気が漂い始める。暗雲が立ちこめ始める。

というのが、とにかく素敵だ。好きなところだ、って言える。

放置しておいたらあっさりこのまま端から端まで突き抜けてしまうであろう勢い、と、近寄ってきたらバチバチにぶつかってやるぞという圧力が、見通しよく発生してくるし、突き刺さったある一本に対して、それにつながるであろうもう一本のペグを想像するだけで、そして、実際につながったブリッジを見るだけで、強固な壁が立ちふさがってきたかのような絶望に見舞われる。

というのが、たまらないところである。

もちろん逆に、想像力を巡らせていくことによって、思ってもみなかったところがつながったときの気持ちよさ(つながるじゃん!と気づいたときの快感)も、ずば抜けている。ここの気持ちよさにはまっているところもあるかとは思う。

黒が足掻く景色(じぶんが黒です)

もちろん、実力差が目立つゲームなのは間違いない。だから、戦うという間もなくあっさりと強者にすべての手を潰されて、打開策もつぶされて、なにもできないまま負けて、もういやだ!ってなりそうなのは、わかる。想像もできるし、正直そういう状況は避けられないかなと思う。

けどそれでも、うまいこと実力伯仲する相手と対戦したときの──そしてその真剣な戦いの中で、一手の切れ味あるつながりを見つけたときの、気持ちよさに関しては、是非味わってほしい、って思ってしまうところがあるのだ。それくらいに楽しい経験だった。個人的には(相手側が苦悶の表情を浮かべていた気もするので、一概に誰にでも薦められるものではない、とは注釈しておきたくなるところもある)

運要素なし、秘匿情報なし、ということで、基本的には苦しみ厳しさを味わわされがちなアブストラクトなのだけど、実力が拮抗していたらほんとうに楽しい、とは思っている。

ボードゲームのおもしろさについて、いろいろな面白要素を切り口にして語られることがあるけれど、「実力が伯仲している相手と遊んだときに見えてくる面白さ」、みたいな話もあるなあと思う。

運要素がうまく組み入れられていて、実力差のある相手であってもよい勝負になって、楽しい、といったあたりのデザイン論がこのあたりの話になるのかなとも思う。

対戦相手とのマッチングによって面白さを担保する、って話まで行くと、現状のボードゲームデザインの文脈内では語りきれないところも出てくる気がしますけど、でもちょうど、昨今のコンピュータゲームのオンライン対戦の世界なんかでは、ランクやレートによって、試行錯誤して頑張ろうとしているところがある気もします。人類の「遊び」にとって、このあたりはまだまだ進化の余地がありそうな気はします。

というわけで、仲の良い好敵手を見つけて遊ぶの推奨、なんてふうにハードルは上げつつも、古典でありながら間違いなく傑作、といえるゲームだと思うので、ぜひ一度は遊んでみてほしいボードゲームです。紙ペンでもぜんぜん遜色ないのでお試しでも是非(というか紙ペン版が元祖らしいですが)

ツィクスト / TwixT

5

One Comment on “ツィクスト / TwixT”

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