今回、デザイナーであるAteamのTOSHIKI ARAOさん(以下あらおさん)に機会を頂き、インタビューさせて頂きました。
「ナナトリドリ」はアークライト・ゲーム賞2022で佳作を受賞した「ハチトレイン」のリニューアル作品。どのようにして作られたのか?聞きたかったことを余さず聞いてきました。
では、どうぞ!
目次
デザイナーさんについて
TOSHIKI ARAO
Ateamに所属するデザイナー。
代表作は「ギリギリワード」。
他には「怒れる森のくまさん」「あくまのやさい」など。
Ateam
Ateamは「はまりばカフェ」という横浜にあるボードゲームカフェの店員や常連客などで、2021年に結成されたボードゲームサークル。 現在は6人のメンバーで、ゲームデザイン、イラスト、広報、動画作成、ルールブック作成などを行っています。
オープニング
今回はお時間を作って頂きありがとうございます。
さっそくですが、簡単に自己紹介をお願いします。お名前とサークル名を教えてください。
Ateamというボードゲームサークルでゲームデザインを担当している あらおです。
あらおさんがボードゲームにハマッたのはいつごろですか?
また、初めて遊んだボードゲームは何ですか?
初めて遊んだボードゲームは、たぶん小学生の頃に遊んだモノポリーですね。
ボードゲームに本格的にハマったの12年くらい前で、その頃はカルカソンヌ、ドミニオン、カタンなどでよく遊んでました。
おー、12年も前から。大先輩だった…!
好きなボードゲームやジャンル、システムも教えて下さい。
好きなゲームはオーディンの祝祭、ガイアプロジェクト、アグリコラなど拡大再生産のゲームが最近は好きですね!
軽めのゲームでは、ボブジテン、コロレット、フォーセールなどが好きです。
全部良いゲームですね~。
オーディンもアグリコラもガイアも誘われたら絶対断らない自信ある。
プレイヤーからクリエイターになろう!としたきっかけってなんですか?
友達がボードゲームを作りたいって話をしていて、最初はそれに乗っかる感じでした。でもだんだん自分の方がボドゲ制作にハマっていった感じでしたね。
本格的にやろうと思ったきっかけは、比較的初期の作品で「爆弾宝箱」というゲームがあるのですが、ゲームマーケットに出展したあとにフランスのIello社さんから声がかかり「Nessos」というタイトルで海外で発売されたことです。
一定の完成度のある作品を作れれば、そういったチャンスもあるのだと思うと、すごくモチベーションが上がりましたね。
Iello社から! 知らなかったです…!不勉強ですみません。
今度是非遊ばせてください!
いやー、それはモチベめちゃくちゃ上がりますね…!夢があります。
ナナトリドリはどうやって作られたか!
今回アークライト社からでた「ナナトリドリ」が商業作品2作目ということでしょうか?
はい、今回の「ナナトリドリ」が、商業作品としては2作目になります。
改めて、おめでとうございます!
では、ナナトリドリについて聞かせていただきます。
「ナナトリドリ」はもとはゲームマーケット2021秋で発表された「ハチトレイン」の全面リニューアル作品なんですよね?
元版であるハチトレインの制作のきっかけを教えてください。
ハチトレインは2019年に作成しましたが、当時影響を受けたゲームに「シリメツレツ」という作品があります。手札並び替え不可のメカニクスはここから着想を得ています。
このメカニクスを参考にしつつ、もっと手札が揃いやすく、一気にカードを出す快感を味わえる新たなゲームを作りたい、というのがハチトレインの制作のきっかけです。
制作にあたって気を付けたところ、工夫したところ、苦労したところなどあったら教えてください。
工夫したところは同人ゲームあるあるですが、いかに少ないコンポーネント(カード枚数)で面白くさせるかです。場に出ている相手のカードを回収する形にしたことで、48枚のカードで成立するゲームになりました。
苦労した点は、ハチトレインは2020年のエッセンシュピールにヤポンブランド経由で出展をする予定でしたが、コロナによって中止になった点です。
アピールする機会を失ってしまったため、もし2021年にAteam版を作ることがなければ、そのままお蔵入りになっていたかもしれません。
お蔵入りに!?ならなくてよかったーー!
危ない危ない。世に出てくれてよかった!
遊んだのはリニューアル版のナナトリドリですが、めちゃくちゃ評判良かったです。
ペンギンを倒しては立てて、もう1回!って何度も遊んでました。
ところで、ハチトレインからナナトリドリへテーマを変更した理由はなんでしょう?
テーマが鳥に変更になった経緯は、アークライトさんからの提案のため、詳細はわからないですが、聞いている話だと、鳥の絵を描くのが上手な、ことり寧子さんという素晴らしいイラストレーターがいるので、その方にお願いしたいとのことでした。実際に上がってきたイラストを見て、絵の完成度の高さと色彩の美しさには本当に感動しましたね。
わかります。どの鳥もめちゃくちゃ可愛いですよね。
では、ハチトレインとナナトリドリの違い、リニューアルで気を付けたところについて教えてください!
2021年のゲムマに出展したあとにアークライトさんから声をかけていただき、商業作品化していくことになりました。
商業作品にするにあたっては、長く多くの人に楽しんでもらえるように、もっとルールを分かりやすくストレスの少ない方向に変更したいとの提案がありました。 アークライトのデベロップチームとこちらのサークルとで、お互いがテストしてみたバージョンを、メールで報告し合い意見交換し、最適化していくためのやりとりを何度も行いました。
ハチトレインとのルールの大きな違いは、数字が1~7までになったことと、場や山札から手に入れたカードを手札に入れることが、強制から任意に変更された点です。
ルールが少し変更になるだけでも、結構プレイ感は違ってしまうので、最適化するためのゲームバランスの調整は、何度も繰り返し行いましたね。
アークライト賞2022で佳作を受賞されたんですよね。
ちなみにどれくらいやりとりされたんですか?期間とか…。 教えられる範囲内でいいので教えてください!
ルールの最終決定まで、大体半年くらいはやり取りしましたね!
何度も話し合ってやっと決まった!っていう箇所はありますか?
場に出ているカードを手札に入れることを任意にすることは、早い段階で決まりましたが、山札から引いたカードも任意にすることは、後半になってようやくまとまった感じはあります。
山札から引いたカードを、すぐに捨て札にできるというのは、ゲームデザイン的には、ストレスフリー過ぎて、直感的に思いつきにくい部分でした。 そのアイデアがまとまったことで、ゲームとしての完成度が一気に上がったように個人的には思います。
なるほどー!ひとつひとつ丁寧にルールは作られてたんですね。
重複してしまうかもなんですが、商業化するにあたって同人時代と意図的に変えた、もしくはかわった点があったらお願いします。
ハチトレインは数字が1~8である他に、山札が8枚で手札も8枚と、何かと8にこだわりが感じられるゲームデザインになっていました。
そこを1~7に変えたことは大きな変化ですね。テスト段階では周りから「8のこだわりを捨てて大丈夫なの!?」と聞かれました(笑)。
ハチトレインの場合、山札に「1/2」「3/4」といった、どちらの数字にも使えるマルチカードが入っていたため、1~8くらいの幅がないと数が揃い過ぎてしまうのですが、ナナトリドリでは山札のマルチカードをなしにしたため、1~7が最もバランスのとれた数字幅になりました。
山札まで8だったとは…!そこまで8揃いだったんですね…。
マルチカードを無くしたのは何か理由があるんですか?
マルチカードがあると山札と手札を分ける必要があり、セットアップの処理に少し時間がかかります。 ナナトリドリはそういった煩雑さを極限まで減らし、最適化させていったゲームという側面がありますね。
分ける手間っていうのはちょっと面倒に感じてしまいますもんね。
なるほどなあ、ナナトリドリは究極にシンプルになっていったんですね!
ナナトリドリで新しく追加されたデュエルモードですがそのきっかけってなんですか?
商業作品化にあたって、2人用のルールはあった方が良いということから、話を進めました。
ゲームとして成り立たせることは、そこまで難しいことではないですが、2人戦ならではの面白さを追加するためには工夫が必要でした。
3人以上のゲームでは、負けなければ良いという思考でプレイできますが、2人戦では相手に必ず勝たなければならない、という思考が入ります。そのため、デュエルをして相手を倒すという楽しみ方をどう表現していくか、そこに時間を割いて制作を進めました。
何故あったほうが良いってなったんですか?
ナナトリドリに限らずですが、ボードゲームは親子や夫婦、カップルなど2人で遊ばれることも多いため、3人以上じゃないと遊べないとなると、あえて購入しなくても良いかな、となりがちです。
もともとのルールが2人で遊んでも十分面白ければ追加ルールは入れないですが、2人だと面白さが落ちてしまう場合は、追加ルールを考えることになります。
ナナトリドリのSNSでのレビューなどを見ても、親子や夫婦でデュエルルールを遊んでいる人も多そうなので、頑張って作って良かったなと改めて思いました。
なるほど。そうですね、2人でも遊べるなら~って買う人いると思います! デュエルは私も遊びました。パス用のカードがカードを出すときにも使えるって感じがライフ削って相手を倒す!みたいな熱い展開が出来て好きです!
あらおさんからみたナナトリドリのおすすめポイントを教えてください。
発売されて以降、ボードゲームで普段遊ばない身近な人に遊んでもらうことが何度かありましたが、好評をいただいています。
手札を一気に出せるのは気持ち良いみたいで、そこは多くの人に楽しんでもらえる魅力なのかなと思います。
6枚出しで「ドヤァ」となっても7枚出しで返されるなど、終盤の熱い展開を体験できるがおすすめポイントですね。
あと6人まで遊べること、そこまで長考せず手軽にダラダラと楽しめることなど、旅行や合宿、ホームパーティーなどに1つ持っていくゲームとしてもピッタリだと思っています。
デュエルルールに関しては、ayaさんが書いてくれたような展開を、3分とか5分で味わえるところがおすすめポイントですね。
あーw相手からとったカードで上回って勝つのはドヤ感あります!そこが本当に楽しい!
Ateamさんの今後の活躍に期待!
今後の展開で注目して欲しいところはどこですか?
Ateamの活動で言えば、ゲームマーケット2023春の作品で「スペースインベスターズ」という宇宙開発をテーマにした、拡大再生産のカードゲームがあるので、その作品に注目してもらえると嬉しいです。
あとは、2時間級の重量級ゲームを作っていて、プロトタイプ版はあるのですが、コンポーネントがあまりにも多いため、同人で出すのは今は難しいかなと思っています。
いつか製品化したいと思っているので、長い目で注目してもらえると嬉しいです。
おお!ついに重量級を制作なさるんですね。楽しみです。
では、ここまで長い間ありがとうございました。最後にここまで読んでくれた方たちに一言お願いします!
ナナトリドリのゲームの魅力が少しでも伝わったなら幸いです。 インタビュー記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。
ありがとうございました!
ゲムマ2023春の作品「スペースインベスターズ」
ということで、新作さんもがっつり紹介させて頂きます。カードゲームで拡大再生産!
駄目ダイスメンバーが書いた「ナナトリドリ」レビューはこちら
One Comment on “ナナトリドリデザイナーインタビュー”
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